コラム

桜咲刹那と京都神鳴流の関係

(2005/08/14)

○はじめに

今回のコラムで取り上げるのは「刹那」です。修学旅行編で鮮烈なデビューを飾り、あれよあれよ言う間に人気投票連覇を達成してしまった人気キャラ。初登場時は眼光鋭く、近寄りがたい雰囲気を持っていた刹那ですが、今ではずいぶんと丸くなり、コスプレ担当までこなすようになっているのは皆さんご存知の通りですね。
その刹那が扱う剣術が「京都神鳴流」。多彩な技を持ち、京の街を魔物から護ってきたこの剣と刹那との関係を読み解きつつ、「神鳴流」「関西呪術協会」「近衛家」といったところを整理し、「刹那の心理面での変化を見てみよう」というのが今回のテーマです。

まずはこのコラムを書くきっかけとなったメールのご紹介から。連載103時間目の感想ということで頂いた文章です。

>智さん

まず刹那×明日菜
(中略)
ここのポイントは「せっちゃんが黒から白に変わったこと」。
「ネギま!で遊ぶ」さんで「ネギま!102話への予習〜刹那と明日菜の軌跡〜」として特集されていますが、烏族と人間のハーフの刹那は基本的にはどちらからも受け入れられない立場でした。偶然かどうかは別として、神鳴流に拾われた刹那は「生きる術として」神鳴流を覚え始め、「結果として」木乃香に出会い、「守れない自分」を超えるために修行を続け、「『自分が』『お嬢様を』守るために」一人で突っ張って、修学旅行編では「自分の正体をさらしてでも」木乃香を救います。明日菜たちには受け入れてもらえましたが、刹那にとっては神鳴流=生きる術=自分の生い立ち=負のトラウマであり、「お嬢様を守るため」という至高の目的ではじめてその意義が昇華されるものでした。

刹那にとっては自分の存在をあっさりと肯定して、思いもしなかった優しい日常生活に引き入れてくれた明日菜に対する感謝の念はいわずもがなですが、その明日菜がネギに対する想いから新たなスキルを必要とした時に「剣術や気」を教えることができ、さらに今回明日菜がオーバーフローしてしまった時に「これからの自分たちのあり方=ネギのストッパー」であることを示すことができたことは、「負を隠す術」、「自分の唯一の存在意義」であった神鳴流が「ネギに対する明日菜の保護者orパートナーとしての道」を示し、「いずれ記憶が戻ったときの明日菜の負のトラウマ(まだわかんないけど)」の解決方法を、咸卦法とともに「(もう誰も死なせないための)護る力の一つ」として示すことができたことは、刹那にとって自分の生き方が180度変わるくらいの経験だったのだと思います。(まだ刹那は前者しか気づいていませんが)
「あのコがまた無茶をしそうになったら 私達があのコを守りましょう たとえどんなコトがあっても」と言う彼女の科白は、単なる一人を「守る者」からすべてを「護る者」、自分の道を自信をもって「示す者」への成長の萌芽であり、神鳴流が「生きる術」から「吾身自身」に変わった瞬間ではないでしょうか。もはや彼女にかつてのような影はありません。今や彼女は光です。

かつて四葉五月がネギに決定的な一言をいいました。
「誰かを恨んだり何かから逃げたりして手に入れた力でも…それは立派なあなたの力です ネギ先生!! 恥ずかしいなんて思わないで! 元気出して」
神鳴流は刹那の「生き残る術」から「生きる力」に変わりました。
刹那は今や「ハーフの」刹那でも「神鳴流の命を受けた」刹那でもなく、「桜咲刹那」自身です。彼女の成長が「神鳴流」の成長でもあるのです。
今後明日菜が記憶を取り戻し、悩み、苦しんだとしても、かつて同じような暗闇から明日菜により救われた刹那は、かならず明日菜を救い出し、もう一度笑顔を取り戻してくれると思います。

以上、長文でしたが引用させて頂きました。(お待たせしてスミマセンでしたm(__)m>智さん)

以前、自分は連載の感想にて

>明日菜との戦いを楽しみ、嬉しさを感じる刹那。なんか見ているとこっちまで嬉しくなってくるのは何故でしょう…。せっちゃん、頑張ってきたもんね…うん。

という一文を書きましたが、この「なんか嬉しくなる」理由がこのあたりにありそうです。

ということで、それではまずは「神鳴流」に関して少し整理してみようと思います。

○京都神鳴流――神鳴る剣

・神鳴流とは何か
前作『ラブひな』でも登場した剣術の流派なんですが、その実態はやや不透明です。(まぁ元々秘密の剣なんで当たり前といえば当たり前なんですが…)
設定的には『ネギま!』の神鳴流は『ラブひな』でのそれに準拠しているようで、『ネギま!』だけでは見えてこなかった部分が『ラブひな』を読むことで分かったりします。まぁ描き方はずいぶん異なっているんですが。

とりあえず、キャラクターが神鳴流について説明している部分を『ラブひな』と『ネギま!』から抜き出してみましょうか。

「その一撃は天を引き裂き岩をも砕く無名の暗殺剣」
(成瀬川なる『ラブひな』HINATA.6)
「その昔京都に出没する魔物・怨霊を調伏するために組織された無敵の戦闘集団の末裔」
(同上)
「京の深山に秘して伝わると言う神鳴る剣」
(瀬田記康『ラブひな』HINATA.37)
「京を護り 魔を討つために組織された掛け値なしの力を持つ戦闘集団」
(桜咲刹那『ネギま!』30時間目)

なるのセリフはその後で「冗談よ」と言っていることから話半分で見ておいたほうが良さそうですが…。まとめると、「その昔に京を魔物から護るために組織され」「深山に秘して伝わってきた」「掛け値なしの」「無敵の戦闘集団」といったところでしょうか。また、その歴史は数百年という情報もあります(『ラブひな』HINATA.72)。

さて、ここまではいいとして。では具体的に「神鳴流」という組織は一体どのような構造になっているのでしょうか?

『ラブひな』においての神鳴流は青山家が継承していました。これは『ネギま!』においても同じであると思われ、刹那と木乃香の出会いのシーン(30時間目)でモブとして登場している神鳴流の師範は青山鶴子、刹那が袖をつかんでいる人物は青山素子ではないかと考えられます。(ちなみに仮に刹那5歳とすると素子は12歳。ちょっとギリギリか…?)
また、KC4巻おまけに収録の刹那の初期設定には「関東に出てからは○子に習いに行ってた」という記述があります。○子ってありますが、普通に考えて素子でしょうね。(ん?…ということは、刹那は「ひなた荘」に来ている可能性が!?)

←鶴子と素子(?)

『ラブひな』では、「女は結婚すれば(道場を)継がなくても済む」(『ラブひな』HINATA.72)という、いかにもご都合主義(^^;)の設定があったりしましたが、これは『ネギま!』ではあまり関係ないでしょうね(笑)

道場は京都の山奥にあり(ご丁寧に「神鳴流道場ココ→」の看板が立ててある(笑)(『ラブひな』HINATA.74))、青山家の実家も兼ねています(併設?)。建物は作中の2001年に国の重要文化財に指定されてもいます(『ラブひな』HINATA.118)。

仕事は退魔関連がメインであり、全国のそういった裏のトラブルに派遣されているものと思われます。普通の剣術道場のように、門下生を取って剣道を教えるといったことを行っているかは不明ですが、まぁおそらくはしてないんじゃないかと。
では剣士となる人間をどうやって集めているのか?という疑問が浮かぶのですが、これも定かではありません。刹那のように半妖の人間を進んで受け入れているなどと考えることもできますが、如何せん推測の域を出ません。

また、神鳴流の剣士は何人くらいいるのか?という疑問もあります。現在までに名前が判明しているのは、青山鶴子、素子、桜咲刹那、月詠、近衛詠春の5人のみ。名前の無い人たちでは鶴子の夫や、『ラブひな』HINATA.72にて素子がカメの化け物に襲われる夢の中で登場した人物たちなどが挙げられます。(ちなみに、このときに登場したのは鶴子を含めて6人。すべて神鳴流剣士という証拠があるわけではありませんが一つの目安にはなるかと。また、この人たちの武器を見てみると背に二刀を背負ったものや、かぎ爪のようなものを装備した姿が見えます。)
確かなことは分かりませんが、技を習得するための修行は厳しく、その絶対数は少ないのではないかというのが私の考えです。

・関西呪術協会との関係
神鳴流は関西呪術協会と深いつながりを持っているようです。呪符使いの護衛などをはじめとして、様々な仕事のパートナーとして協力関係にあると思われます。
またその繋がりの深さは、元神鳴流の剣士であった詠春が現在の関西呪術協会の長という立場に納まっていることから見ても、かなりのものであると想像できます。

「神鳴流」と「関西呪術協会」と「近衛家」という3者はそれぞれ複雑に絡んでいるのでややこしいんですが(詠春なんかは全てに関連している始末^^;)、「関西呪術協会」の中心的な存在として“やんごとなき血脈”である「近衛家」があり、それぞれのパートナーとして「神鳴流」があるといった関係だと思われます。
「関東魔法協会」の会長も「近衛家」である木乃香の祖父が務めていることを考えると、日本の魔術関連の協会は「近衛家」が取り仕切っているようですね。そうすると浮かんでくる「京都と関東のどちらが「近衛家」の本元であるか?」という問いは、やはり京都であると考えるのが妥当かと思います。

ちなみに現実で「近衛家」と言えば、五摂家の一つとして有名です。→「近衛家」(Wikipedia)
こちらも“やんごとなき血脈”ですね。

・神鳴流の“今”――刹那と月詠
そんな神鳴流ですが、“バトルマニアでロリータファッションで小太刀二刀流”という月詠が現れるなど、2003年時点で少し様子がおかしいようです。 素子の代になって何かあったんでしょうか(^^;) その素子本人は2浪の末に東大に通い始めたばかりの時期になるんですが…

「こんなのが神鳴流とは・・時代も変わったな」(『ネギま!』31〜32時間目)
「最近の神鳴流は妖怪を飼っているのか?」(『ネギま!』42〜43時間目)

月詠は天ヶ崎千草にお金で雇われただけの関係のようでしたが、バトルマニアという性格が禍して刹那をしつこく狙ってきました。「人を守り魔を討つ」ことが真髄の神鳴流(『ラブひな』HINATA.40)として、月詠のように自分が楽しみたいから剣を振るうという行為はどうも腑に落ちません。

ところで「ひゃっきやこー」は妖怪なんですかね?式神ではなくて。刹那がそう言ってるならそうなんでしょうけど。

余談ですが、刹那と月詠は面識がありませんでした。刹那が麻帆良に来たのは中1の時ですので約2年前。月詠の素質なんかは抜きにして考えると、入門してからたった2年であれほどの腕前になることは難しいような気がします。刹那が京にいた頃から修行を積んでいたと考えるのが妥当でしょうか。とすれば、刹那が月詠を知らなかったのは解せません。
仮説として考えられるのは、刹那が神鳴流道場を離れていたというものでしょうか。52時間目での刹那のセリフに、「お嬢様を守るという誓いも果たし 神鳴流に拾われた私を育ててくれた近衛家への御恩も返すことができました」とあります。『私を育ててくれた近衛家』という部分、いろいろと考えられる言い方です。“仕事を通じて成長させてくれた”程度の意味合いなのか、それとも実際に養育してくれたのか。もし養育の意味が含まれていたとしたら、刹那は近衛家(関西呪術協会総本山)に住んでいた可能性があるのではないでしょうか。その場合、木乃香が京都にいた間はそうした話はなかったので、木乃香が麻帆良に引っ越した後に近衛家に修行に出されたということになるかと思います。刹那が9歳の時、鶴子が結婚し現役を引退、素子が家出してひなた壮へ行っていることを考えると、何やらこの辺りが怪しそうな感じです。(鶴子「じゃ元気でな 私も一族の仕事に就くさかい しばらく会えん」(『ラブひな』HINATA.40)というセリフもあったように、仕事に就くと道場にはなかなか戻れないのかも)
まぁそれでも道場に一度も顔を出さないというのは考えにくい話ですし、疑問ではあるんですが。
月詠が本当は神鳴流ではないとか、他の流派で修行を積んでこの2年の間に神鳴流に乗り換えたという可能性も無いことは無いものの、ちょっと考えにくいですね。月詠が浦島景太郎やネギ並に上達の早い人物だったとかは……ありますかね?(笑)

(* 追記 68時間目の小太郎のセリフ「本家の神鳴流剣士」から、本家のほかに分家もあることは確実っぽいです。刹那は本家、月詠は分家の神鳴流剣士だったということで説明付きそうです)
(Web拍手での情報提供ありがとうございました)

○刹那の生い立ち――神鳴流との出会い

それでは本題、刹那について見ていこうと思います。まずは生い立ちから。
刹那は烏族と人間のハーフであり、その一族の掟に縛られて生きてきました(「い 一応 一族の掟ですから・・・・あの姿を見られた以上仕方ないのです・・」52時間目)。そして、烏族は化け物と同類という考えから自らの真の姿を「醜い」ものとして捉え、嫌われることに恐れを抱き、常にコンプレックスを持ってきました(50時間目)。
刹那は烏族の中でどのような扱いを受けていたのでしょうか。人間とのハーフということで、同じく狗族と人間のハーフである小太郎が捨て子同然の扱いを受けたように、刹那の待遇も決していいと言えるものではなかったことは想像に難くありません。背に羽の生えた烏族の姿を「醜い」と考えていたことからも、そうした忌まわしい過去が垣間見えます。おそらく、いくつもの辛い想いを経験してきたのではないかと考えられます。記憶としてもっている、いないに関わらず、深層心理として刹那の心に深く影を落としていたことでしょう。

そんな刹那ですが、どんな経緯かは不明ながら神鳴流に拾われることになります(「神鳴流に拾われた私を…」『ネギま!』52時間目)。
辛い境遇の中から救ってくれた神鳴流に刹那は恩義を感じ、剣の修行をして役に立つことで報いようという想いがあったように思います。また、そうしなければ自分は生きていけないという気持ちも持っていたかもしれません。『刹那にとっては神鳴流=生きる術』だったというのはその通りの表現だと思います。

では刹那にとって神鳴流を学ぶということは、どのような意味を持っていたのでしょうか。
力を手に入れるということ。それは、自らのコンプレックスを覆い隠す格好の隠れ蓑でもあったように感じられます。烏族の力無しに、世話になった人たちのために役立てることのできる力を身に付けていくことは、刹那にとっては願ってもないことだったでしょう。(「負を隠す術」)

そして、その想いをより一層強固のものにした、と言うより更に大きな想いの対象として刹那の前に現れたのが木乃香でした。

○刹那の想い――木乃香との出会い

木乃香と刹那の出会いのシーンは前述の通り30時間目で登場しました。だだっ広いお屋敷でひとり鞠突きをして遊んでいた木乃香の前に、神鳴流の師範に連れられた刹那が現れます。
この出会いは偶然だったのか、それとも詠春や鶴子の思いやりによるものだったのか?知るすべはありませんが、この出会いが二人にとって、とてもとても大きなものになったことは間違いの無いことでしょう。

このときの刹那を見ると、素子(?)の袖をつかんで後ろに隠れ様子を窺うといった態度を見せています。
この時点での刹那の性格を示す貴重なシーンだと思うのですが、刹那の性格はこのころから基本的には変わっておらず、やや奥手なところがあるように思います。それを押し隠せているのも神鳴流の効用でしょうか。

木乃香の初めての友達が「せっちゃん」であったのと同時に、刹那の初めての友達も「このちゃん」だったと思われます。初めてできた友達と過ごす安息の日々は、刹那にとってそれまで経験したことのない喜びを与えたことは想像に難くありません。
神鳴流の使いとして来てはいるものの、この時はまだそれほどの使命感のようなものは持ち合わせていませんでした。

転機となったのは、川で木乃香が溺れそうになった一件(『ネギま!』30時間目)。お嬢様のために神鳴流を学びながら、守ることのできなかった「弱い」自分を悔いて「もっともっと強くなる」ことを、友達としての気持ちを抑え込んで守護者に徹することを決意したのです。

友達として「このちゃん」と一緒に遊ぶこと
守護者として「お嬢様」を守ること

この二つの想いは相反するものとして、後に刹那を苦しめることになります。
「ただ友達でいてくれればよかった」木乃香と、木乃香の存在が大きすぎて、また自分の生きる意味として「“守る”ことが必要だった」刹那とのすれ違いの始まりでもありました。

それから刹那はより一層修行に励むようになり、二人の距離は次第に離れ、そして木乃香の麻帆良への転校が決まります。

刹那はそれからも修行を重ね、木乃香の護衛として麻帆良へ行く任務を授かります。麻帆良学園にて、同じクラスにいながら陰から見守っていく日々が始まるのでした。
二人は揃って3-Aに進級。そして波乱の修学旅行を迎えます。

○刹那の変化――明日菜との出会い

京都・奈良への修学旅行において、関西呪術協会の一部勢力、陰陽道の呪符使い「天ヶ崎千草」の造反によって、刹那は目に見える形で木乃香を守ることを余儀なくされます。それによって木乃香は「(刹那に)嫌われてしまったのかもしれない」という抱いていた不安が解消され(木乃香「よかったー・・せっちゃん・・・・ウチのコト嫌ってる訳やなかったんやなー・・・・」『ネギま!』31〜32時間目)、刹那に対して積極的な態度に出れるようになります。刹那は仕えるべきお嬢様であり、大好きな友達である木乃香のアタックを拒めるはずも無く、二人の距離は再び一気に縮まることになりました。
(それにしても、誤解が解けてからの木乃香の刹那への全幅の信頼は凄いものがありますね。シネマ村での二人の絆の描写は見ていて気持ちがいいです。)

それと平行して、修学旅行を通して刹那は自分の心の弱さを見つめることになります。きっかけは、のどかのネギへの告白を見たこと。「自分は大好きなお嬢様に正体を明かすことさえできない弱い人間」だということを見て見ぬフリができなくなった刹那は、心にわだかまりを持ち始めます。(そういえば『ラブひな』での素子も、精神面での未熟さから実家を出て修行することにし、紆余曲折を経て成長していく様子が描かれていましたね。)

これらに関して、刹那の行動や精神的な部分に大きく影響を与えたのが明日菜でした。
まず木乃香との関係修復について。
明日菜は「友達の友達は友達」という理論から刹那を友達と呼び、ネギと共に共通の目的である「木乃香を守る」ための仲間となります。そして、いたるところで刹那と木乃香が仲直りできるよう尽力します。

「明日の班行動 一緒に奈良回ろうねー 約束だよーっ」(『ネギま!』31〜32時間目)
「何で陰からなの? 隣にいて おしゃべりでもしながら守ればいいのに」(『ネギま!』33時間目)

次に、自分のトラウマについて。
烏族であることのコンプレックスと弱さを抱え続けてきた刹那に対して、明日菜は風穴を開ける役割を果たしました。

一般人であるはずの明日菜が危険な目にあってまでネギを、また木乃香を守ろうとする姿に刹那は共感し、木乃香と共に話があると呼び出します(『ネギま!』44時間目)。直前に長から「魔法についてこのかに伝えて欲しい」と頼まれていることから、それについて話そうとしたと思われますが、呼び出した場所が「風呂場」であったことを考えると、刹那は自分の正体について話そうと考えていたと見ることもできます。
結局敵の襲撃が入り話はできずに終わってしまいましたが、刹那が「明日菜とネギになら木乃香を任せられる」と感じて全てを打ち明けようとした可能性も十分あるかと。それほど、刹那は明日菜に魅力を感じはじめていたと思われるのです。

その後、大量の鬼に囲まれた時(『ネギま!』47時間目)も、「ああいう化け物を退治・調伏するのが 元々の私の仕事ですから」と寂しげな表情を浮かべる刹那に対し「自分も残る」と進言するなど、明日菜は刹那にとってイレギュラーであり、一緒に戦うことのできる「本当の仲間」として意識されることとなります。

戦闘中、これからのことについての約束も交わされました。

「け 結構・・・・いいコンビかもね 私たち」
「修学旅行帰ったら剣道教えてよ♪刹那さん」
(『ネギま!』47時間目)

そして最終局面、お嬢様を守るため、別れの覚悟で披露した自らの羽を…

「こんなの背中に生えてくんなんてカッコイイじゃん」(『ネギま!』50時間目)

と肯定してくれた事実は、相当大きなショックを刹那に与えたことと思います。

刹那が言い訳に使っていた“木乃香に近づけなかった理由”は二つ。「魔法をバラしてしまう訳にはいかなかったこと」と、「身分の違い」でした(『ネギま!』33時間目)。この二つ、修学旅行編でしっかり解消されているんですね。
「魔法バレ」に関しては詠春直々に許可をもらい(「刹那君 君の口からそれとなくこのかに伝えてあげてもらえますか」『ネギま!』44時間目)、「身分の違い」つまり自分のコンプレックスに関しては、明日菜の励ましと木乃香の「キレーなハネ・・・・ なんや天使みたいやなー」(『ネギま!』51時間目)の言葉に全てが救われた感を受けます。

刹那は、ネギの子供らしい説得もあり、一族の掟を破って(これまでの殻を破って)麻帆良学園に戻り、明日菜と木乃香そしてネギの輪の中に入っていくことになります。

○刹那の喜び――桜咲刹那として

修学旅行から帰ってからの刹那は、ネギ、木乃香、明日菜の友達であり、良き助言者として一緒に過ごすことが多くなります。修学旅行での約束どおり明日菜に剣術を教え、木乃香とは仮契約する日もそう遠くない感じでしょうか?(ネギとの時みたいに切羽詰らないと無理か?(笑))
学園祭の準備編、本番編では様々な衣装を身に着けるようになり、また同時によく笑顔を見せるようになります。2回目の学園祭初日ではネギとの擬似デートの中でこれまでの過去を振り返り、先を見た発言をしています。

「私がこんなふうに穏やかな心で学園祭を楽しんだりできるのも ネギ先生のおかげですね」
「ネギ先生は私の恩人・・・・特別なんです 先生に何かあったら 私が必ず駆けつけます」
(『ネギま!』82時間目)

またここでは火星人(?)、超との接触もあり、やはり仕事モードは欠かせない刹那さんといったところでしょうか。

そして武道会が始まってからは、刹那は実力者としてその力を遺憾なく発揮します。そして、明日菜へ練習を授けてきた成果が、ここで早くも花を開かせ始めました。
101、102時間目での師弟対戦において、クウネル・サンダースの助言を得たとはいえ、自分と互角に渡り合った明日菜の実力に刹那は喜びます。

「なんででしょう 明日菜さん お嬢様・・・・ 私・・今ちょっと嬉しいです!」(『ネギま!』101時間目)

しかし、その力は暴走を伴う危険なものでもありました。それを抑えることのできる力を自分は持っていることも、刹那にとっては喜びになったことでしょう。

「バカですね 明日菜さん 私があの程度の太刀筋で どうにかなるとでも?」(『ネギま!』103時間目)

そして、これからさらに強くなる明日菜を育てることのできる喜び。

「そのためには さらにまだまだ修行です」(『ネギま!』103時間目)

このセリフを言う刹那の嬉しそうな顔。堪りません!(笑)
そして、82時間目でのセリフにも通じるものがあるこのセリフ。

「ネギ先生のことが心配なら・・私たちで守ってあげればいいんです」
「あのコがまた無茶をしそうになったら 私達があのコを守りましょう たとえどんなコトがあっても」
(『ネギま!』103時間目)

焦り、不安、大切なものを失くしてしまうことへの恐れ。そういった感情に振り回されそうになった明日菜を、やさしく導いていくことができる喜び。
守るべきものがある。一緒に守る仲間がいる。そうした暖かい感情が、刹那の表情に表れているような気がします。

『神鳴流が「生きる術」から「生きる力」に変わった瞬間』

その時、確かに彼女は光り輝いていました。

○おわりに

かつて、素子が鶴子に言われた言葉があります。

「大事なんは「力」でも「速さ」でも ましてや「技」でもない」
「流れるように!「今」を感じるんや!」
(『ラブひな』HINATA.40)

素子は姉がいつも楽しそうに笑っていたことを思い出し、それまでできなかった奥義を成し遂げました。
同じように、いつも楽しく笑えるようになった刹那には、もはや敵はいないのかもしれません。

木乃香の大切なパートナーとして――
明日菜と相互に高め合える師弟関係として――
そして「特別な人」ネギを守る従者として――
人気ナンバー1キャラのこれからの活躍は約束されたも同然のようです。
これからの刹那に期待しましょう。

次回はちょっとおバカなノリで『和泉亜子〜そのツッコミと告白の時』をお送りする予定です。

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